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建設業界の人手不足解消に向けて―深刻な現状を打ち破るには

深刻な人手不足といわれる建設業界は、今どのような状況に置かれているのでしょうか。さまざまな分析から人手不足の現状を解説します。また、就業率の低下を招いた原因と、解消に向けて取り組むべきポイントについて考えます。

深刻な人手不足に悩む建設業界の現状

建設業界の人手不足はどのような状況を迎えているのでしょうか。調査結果をもとに動向を見てみましょう。

減少する建設業就業者

建設業界の就業者数は、年々減少しています。この傾向は人事戦略研究所の山口俊一氏が「プレジデントオンライン」に寄稿した記事で解説されています。
このなかでは、総務省が毎月公表している「労働力調査」から、建設業就業者数の推移をグラフにまとめています。1995年から2015年までの20年間、全業種の就業者数はほぼ横ばいで変わらないのに対し、建設業の就業者数は2000年以降、減少の一途をたどっている現状が見て取れます。

有効求人倍率の高さ

厚生労働省が公表した建設労働者を取り巻く状況について(PDF)では、建設業全体における有効求人倍率の推移を紹介しています。これを見ると、建設業界の有効求人倍率は2009年以降急上昇し、2014年では建設・土木・測量技術者において3.96倍にも。これは求職者の数に対し、4倍近くの求人が出ていることを意味します。一方で全産業の有効求人倍率を見ると、同年で0.91倍と、逆に求職者数の方が多いことが分かります。

また、厚生労働省の職業別一般職業紹介状況(実数)(PDF)によると、2017年11月における建築・土木・測量技術者の有効求人倍率は5.76倍と依然高い水準を示しています。さらに、当月の新規求職者数と新規求人数から算出される新規求人倍率では、8.28倍をマークし、建設技術者の不足状況がさらに厳しさを増していることがうかがえます。

建設業界の高齢化

建設業界が抱える問題として、業界全体の高齢化による第2の人手不足が懸念されています。

建設経済研究所がまとめ、国土交通省が公表した建設業就業者数の将来推計(PDF)では、建設業就業者数の推移と業界の年齢分布について、実状に触れています。

こちらでも建設業就業者数は減少していること、さらに全産業に対して55歳以上の割合が高いことをグラフで表しています。また20~24歳の就業率は、1995年から2010年の間で6割も低下しています。

このように建設業界では、新規就業者不足に加え、現役就業者においても高齢化が進んでいます。あと数年でこの層が大量に定年を迎え、建設業界の人手不足は深刻さを増すと考えられます。

人手不足の理由

ではなぜこのような人手不足に陥っているのか、なぜ業界の高齢化が進み若い層の就業率が低いのかを考えてみましょう。

3K職場の記憶

建設業界には、いまだに「3K」の印象が残っていることが、ひとつめの理由として挙げられます。「きつい」「汚い」「危険」と、嫌われる職場の要素がそろっているというイメージが、業界へ新たに就業しようという人を少なくしていると考えられるのではないでしょうか。

労働時間と所得

さらに建設業界においては、上記の3Kに加え「給料が安い」「休暇が少ない」「かっこ悪い」を加えた6Kのイメージまで持たれている場合もあります。

厚生労働省の公表している2つのデータを見てみましょう。
「毎月勤労統計調査」によると、2016年の総労働時間は約2056時間と、全産業と比較して331時間長いという結果が出ています。これが、「休暇が少ない」というイメージのもとになっていると思われます。
また「賃金構造基本統計調査」によると、かつて建設業は製造業より平均所得が低かったことが分かります。それが今(2016年調査結果)では逆転し、建設業の方が高い水準になっていますが、「給料が安い」というイメージは根強く、いまだ払拭しきれたとは言い難い状況です。

不祥事や不安定のイメージ

建設業界はかつて、度重なる不祥事や大量リストラが大々的に報じられたことから、あまりいいイメージを持たれていなことも理由のひとつです。不祥事によるクリーンでない印象と、リストラによる不安定な就職先という印象が、就業しようとする若者の親世代には残っています。これが若者の就業先として、建設業を選ぶことにブレーキを掛けているのではないでしょうか。

変わらない業界構造

また、建設業特有の業界構造も、ひとつの原因になっている可能性があります。建設業界は、ゼネコンが大きな受注を独占し、中小企業は下請けとして受注するか、小規模の工事しか請け負えない構造になっています。これはつまり、給与水準が企業規模に比例することを意味します。

他業界では、優秀な技術や開発力により、中小企業でも大きな利益を上げることが可能です。しかし、建設業界ではその構造からこれが不可能に近く、大きな収益を上げられるのは大手ゼネコンのみというのが事実。これが中小規模の建設業者への就職を避ける要因となり、業界全体の人手不足につながっていると考えられます。

人手不足を解消する3つのポイント

建設業の就業率を上げ、人手不足を解消するポイントとして、次の3つがあります。

  • 待遇改善
    賃金や休暇面での待遇を見直し、福利厚生の充実を推進しなければ、新たな人材流入にはつながりません。
  • イメージ向上
    3Kや不祥事の蔓延(まんえん)といった悪いイメージを払拭し、いい印象を世間に与える工夫が必要です。実際にこの取り組みは、国土交通省と経団連によってすでに始まっています。「新3K」として、「(給料、休日、希望)を与えていく産業に」することを目標に掲げ、建設業で働く人の処遇改善を目指す意向を示しています。
  • 抜本的な構造改革
    旧態依然の重層下請け構造を変えていかなければ、大手以外の就業率は下がり、業界全体として人手不足は解消できません。

建設業に求められる変革のとき

大震災後の復興特需も落ち着いた今、建設業の人手不足は一時的な要因によるものではないことが浮き彫りになり、深刻さを増しました。今後就業率を向上させていくためには、その背景にある建設業全体に対するイメージ、賃金や休暇に関する問題などを解消していく必要があります。これまでの常識を貫くばかりでは、現在の状況を打ち破ることは見込めないでしょう。建設業界の大きな変革が今求められているのです。