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建設業界で働く外国人労働者事情―人手不足の解消に向けた取り組み

深刻な人手不足が懸念される建設業界。そのなかで外国人労働者はどのような状況に置かれているのでしょうか。建設業界が外国人労働者を求める背景とそのメリット、またその問題点について考えます。

建設業界に外国人労働者が増えている背景

建設業界において、外国人労働者の雇用が進んでいます。その背景のひとつにあるのが、深刻化する人手不足です。

国土交通省が公表した資料(PDF)によると、建設業界の就業者数は1997年にピークを迎え、全国で年平均685万人いたとされています。その後就業者数は減少の一途をたどり、2015年には年平均500万人にまで落ち込んでいます。比率で見るとピーク時に対し約27%減少、およそ4分の3にまで減っているのです。

このように建設業界への就業者が減っていることに加え、東日本大震災からの復興事業が加速したことにより、実際の現場ではさらに人員が足りていない状況です。また、差し迫った東京オリンピックに向けた特需により、人手不足が加速するのではないかと懸念されています。

こうした背景から国内の就業者不足を補おうと、建設業界では外国人労働者を雇用する企業が増加しています。またその一方で、国により進められているのが、外国人労働者を受け入れるための体制づくりです。

国土交通省では、「建設分野における外国人材の活用に係る緊急措置について」(PDF)として資料をまとめ、外国人労働者の受け入れ強化を図る方針です。この資料では、国内人材確保の施策パッケージとして、国土交通省と厚生労働省が連携して行う国内人材確保に向けた取り組みが紹介されています。それと同時に、2020年までの時限的措置として新たな外国人材を活用するための仕組みづくりを説明しています。

外国人労働者を受け入れるメリット

外国人労働者の雇用がもたらす大きなメリットとして次の4つが挙げられます。

  • 若い労働力を確保できる
    国内では建設業界への新規就業者が減少していることから、建設業界の高齢化が進んでいます。また、国全体としても高齢化が進む日本では、若い労働力の確保は難しいと考えられています。一方で、外国人労働者は若い男性も多く、建設業界の求める若い労働力を確保することが可能です。
  • 人件費の低減が図れる
    企業が外国人労働者の雇用に期待するものとして、やはり人件費の安さがあります。日本に働きに来る外国人の多くは、日本に対し数分の一の貨幣価値の国からやってくる場合もあります。母国の賃金に比べれば数倍に当たることもあるため、安い賃金で働いてもらえる可能性があるのです。ただし、不当な条件下での労働は法律違反だということは、当然のこととして覚えておきましょう。
  • 労働に対する意欲が高い
    外国人労働者の多くは母国での労働に比べ、日本で高い賃金を得ることが可能です。また、日本で働いた経験は一種のステータスになる場合もあります。こういったことから、労働に対して高い意欲を持っている外国人労働者が多く、業務にも一生懸命取り組んでくれることが期待できます。
  • 交流による周囲の活性化
    職場に意欲を持った若い労働者が増えることにより、周囲も影響を受けます。「遠い異国の地から来て頑張って働いている」という状況を見て、「自分も頑張らねば」と刺激を受けることもあるでしょう。また、文化の違う人たちと共に仕事をするとき、日本人同士でのやりとりに比べ、より相手のことを理解しようという気持ちが働きます。これにより連絡が密になり、お互いのことを考えながら働く職場へと変革していく可能性が生まれます。

外国人労働者雇用の前にある壁

一方で、大量の外国人労働者受け入れにより懸念される影響もあります。

実際の建設現場において求められているのは、専門技能を持つ技能労働者です。一時的な外国人労働者の受け入れでは、現場の感じている人手不足を解消することはできないという指摘もあります。

また、外国人技能実習制度の悪用が横行したことも大きな問題となっています。「技能実習」の名のもとに、不当に安い賃金で外国人を長時間にわたり労働させる企業があとを絶たないのです。そこでこのような実態を改善しようと、厚生労働省と法務省の連携により、不正防止対策の強化、対象職種や受け入れ期間の見直しが検討されています。2017年には「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が施行され、制度の趣旨に沿った適正活用に向け法整備も進んでいます。

このような対策が進む一方で、建設業者にとっては「安く雇える」という感覚だった外国人労働者に対し、日本人を雇用するのと変わらない賃金が必要になりつつあります。また、規制の強化によって手続きが煩雑化・長時間化し、外国人労働者の雇い入れが敬遠されるケースも増えています。

数年前までは、外国人労働者の雇用に対して一番の問題とされていたのは「言葉の壁」でした。しかし現在では、ある程度のコミュニケーションをとれるレベルまで日本語を習得してから来日する人が多いため、あまり障壁にならなくなってきています。

それに代わり、技能・賃金・規制といった新しい問題が出始めているのが現状です。

外国人労働者の雇用には総合的な理解と環境整備が必要

建設業界の人手不足に対し、外国人労働者がどのような状況に置かれているのかをご紹介しました。今後、建設業界の人手不足はさらに進む一方で、外国人労働者の雇用が加速すると予測されます。しかしそのとき、雇用する側の建設業者と雇用される外国人労働者、双方にとってメリットがある仕組みの整備が追いついていなければ、再び制度の悪用がまん延する可能性も。それを防ぐためにも、外国人労働者の雇用には、受け入れ側の総合的な理解とさらなる環境整備が必要となります。